・ああ、そうか。おれは得意なものばかりで、勝負しようとしているんだなあ。そういう気づきがあった。
ある日、タイピングの速度を測ってみましょうと、研修中に上司から言われた。同じ部署に配属された20人が、一斉に文字を打ちはじめる。ズームのどこかから、カタカタカタ、パチパチパチ、ドドドドドド。いろんな音が聞こえてきて、おもしろい。ぼくも同様に文章を打ちつづけていると「終わり!やめてくださいー!」という声。その合図を受けて、全員がシートにスコアなるものを記入する。ぼくは、思いのほか点数が低かった。
じぶんは全体で、真ん中より少し上くらいだった。その事実を、受け止めきれない”自分”もいた。タイピングには自信があるほうだったのに、意外と遅い。なぜだろうと、頭じゅうで理由を考える。いくつかある理由のうちに、エセンシャルなものが「タイプミスが多い」ということであると分かった。測定中のぼくはスピードを意識するあまり、ミスを連発していた。スコアにはタイプした文字数だけでなく、誤まってタイプした文字数も加味される。それでは点数が伸びるはずがない。
考えてみると、ふだんから「打ちやすい位置」にあるサウンドを多用して、文章を打つという癖があった。もちろんキーボードは頻出の単語が打ちやすいように、よく使うアルファベット(K、N、T、Iなど)が人差し指と中指の動きやすい位置にあるよう設計されている。とはいえ、その上でタイピングしやすい「ことば」を無意識に使うようになっていたんだと思う。その結果、ふだん使わないアルファベットを測定中に指示されると、慣れていないのでミスしてしまった。
得意なものだけで勝負できているうちは、物事がスムーズに進む。しかし苦手なものを使わざるを得ない状況に陥ったときに、決まってスピードが落ちる。円滑に物事を進めるためには「①得意なもので勝負できるよう働きかける」か「②苦手を克服する」の選択を取らなければならない。ぼくは前者でやってきた人間だが、仕事においては、最低限のレベルで克服しておくべき”苦手”が存在すると思う。キーボード操作は生産性に直結し、避けては通れない”苦手”なので克服しておきたい。
克服するかどうかの”苦手”をみる上で、ポイントは「最低限かどうか」である。その苦手は”最低限”直しておいたほうがいいの?ということ。きっと誰にでも得意なことはあり、その得意なことを目立たせる上で、苦手なことはあったほうがいい。そのほうが全てがある程度できてしまうより、得意なことが目立つのである。
今日も「頭サビ9割」に来てくださって、ありがとうございました。