はじめに

誰だって話すことはできる。聞くこともできる。しかし読む、書くという行為は、誰もが当然のように、できるわけではないのです。
識字率というのを、ご存知でしょうか。発展途上の国の中には、この数値が50%を切る国もザラです。一方で、日本ほぼ100%。これは子供のときに、学校で習ったからだと言われています。
しかし「書く」という行為を、本当に学校で習ったのでしょうか?
去年、海外で
インターンを始めたとき、こう思いました。
「ヤバイ。文章の書き方ぜんぜん分からん」
振り返ると、学校で「文章の書き方」を習ってないのかもしれません。例えば夏休みの宿題で、読書感想文がありました。好きな本を選んで、読む。感想を書き始めたものの、指定された文字数に届かない。なくなく親にお願いして、手伝ってもらったことも。
しかし完成した作文は、添削してもらえないんですね。
マシな書く技術を持ち合わせないまま、私は
インターンを始めました。だからこそ文章力を上げるために、1年間、いろんな本を読み漁ったのです。本数だけでいうと、ゆうに100冊以上は読みました。今思うと海外にいたのに、読書という「日本でもできること」をし続けたのは、少しもったいないです。
本稿は「書くことが苦手だった私が、1年間で学んだこと」を整理しています。構成としては、
・文章を書く意義と、目標
・文章の書き方
・普段からできること
・参考文献
という4部です。文字数が1万字を超えているように、ウェブ記事からすると、相当長いです。それ故に
スマホでふらっと、気軽に見られる場面を想定しておりません。
インターンを始めたばかりの私のように、文章を書くことに、真剣に向き合う必要が生まれたひと。そんな方達の「書く技術が向上すること」を目的として書きました。ぜひパソコンの大画面で、時間をかけてお読みくださると幸いです。
目次↓
「伝えたい」ことを理解してもらいたかったら、文を書け
ー文章を書く意義について
そもそも、どうして文章を書くのでしょうか。思うに、文章を書く意義は2つあります。
- 考えをまとめるため
- 伝えたいことまで道のりを示すため

まず「考えをまとめるため」という意義は、文章を書く作業を通して、頭の中を整理し、再構築できるからなのです。というのも文字に起こす行為は、目に見えない”考え”を顕在化させる行為であるためです。
よく「考えてから書きなさい」と言われますが、「考えるために書きなさい」ということの方が、より根本的なアド
バイスとして言われるべきでしょう。
次に「伝えたいことまでの道
のりを示すため」というのは、おそらく皆さんが当たり前ように「文章に求めている意義」であると考えます。
例えばあなたが、
iphone XのPR記事を執筆するとします。この際に、あなたが伝えたいことは何でしょうか。「i phone Xが今までにない
スマートフォンである」ことであったり「i phone Xが爆発的に売れている」ことだったり。
「i phone Xはすごい!」とだけ伝えても、読者にそのすごさは、伝わりませんよね。なにか伝えたいとき、読者を納得させるには、裏付ける”根拠”が必要です。
文章を書く意義は、伝えたいことに対し「事実かつ具体的な根拠を”長々と”書けること」と言えるでしょう。言い換えれば「伝えたいことまでの道
のりを十分に示す」ことに意義があります。
ーー伝えたいことがあったら、文章を書かなくても、話せばいいじゃないか。
たしかに話すことで、自分の想いを伝えられるかもしれない。それでも私は、他のコミュニケーション(会話、映像)と比較し「文章は伝える面において優れている」と考えます。
というのも会話の際は、自分のビジュアルや、声のトーン、言葉使いに対し、同時に気配る必要があります。また会話中、発言のやり直しを頻繁に行えません。映像の場合、文字で表現しないぶん、見た人自身の想像と、作り手の意図にズレが生じる可能性が高いです。
一方で、文章はどうでしょうか。文章は気を配るのが文字のみで、書き直せますし、途中で相手に遮られることがない特徴を持ちます。それに文字を用いて、意図を表現できます。好きな思いを「I Love You」と書けば、正確にその愛が伝わってしまう。
「話すほうが楽に伝えられる」と考えられがちですが、本当に伝えたいことなら「文章のほうが伝わりやすい」というのが、私の見解です。(もちろん、文章の書き方を知らなければ、本来の文章が持つ力を最大限発揮できません。)
以上から文章の意義について、こうまとめます。
伝えたいことがあるとき。それを誰かに理解してもらいたければ、文章を書く行為は有効なのだ。
ー文章を書く上での目標とは何か
「嫌われる勇気」の作者・古賀 史健(こが ふみたけ)氏や、メンタリストDaiGo氏によって書かれたものから、ナタリーや
共同通信社で実際に用いられている「ライティングテクニック」まで。様々な文章術の本を読んで、分かったことがあります。
それは、それぞれ文章を書く上での”目標”が異なるのです。なので私も本稿を書くにあたり、文章を書く上での”目標”を定義付けします。
- フェーズ1:文章マナーを踏まえた文章を書く:日本語力の低い文章は、誤解を与えかねない。
- フェーズ2:完読される文章を書く:本来、文章を書く意義である「伝えたいことまでの道のりを示すこと」を満たす。
- フェーズ3:読者を動かす文章を書く:「読む→言葉に反応する→想像する→行動を起こす」というプロセス。
書き手のレベルに合わせて、目標をフェーズ(段階)ごとに分けました。これらは文章を書く意義「伝えたいことを、相手に理解してもらうため」に沿った目標です。
まず最低限の文章マナー(敬語、専門用語、句読点を正しく使う)を身に付けることで、誤解されない文章を目指してください(フェーズ1)。その上で読みやすい文章を書いて、完読される文章を目指します(フェーズ2)。
完読される、基礎的な力が身についた人は「読者を動かす文章」を目指しましょう。なぜなら書き手が持つ「伝えたいこと」の背後には「読み手に行動してほしい」という欲求があるからです。
例えば本のレビュー記事を書いたら、書き手は読み手に「その本を読んでほしい」と思うものです。この記事を書いている私も、皆さんに「文章を書く際に参考にしてほしい」と願っているのです。
だからこそ書き手は、最終目標「読み手を行動させられたかどうか」を設定し、達成できる記事を執筆しなければいけません。
たった1人のあの人に、どう動いてほしいか
今回紹介する、文章を書く手順は「伝えたいことを読み手に、本当に理解してもらいたい場合」を想定しています。文章と一括りにしても、
SNSのテキストから論文、ビジネスメールや記事まで様々です。それぞれ求められる量(長さ)が、全く違いますね。日常における
SNSのやりとりのように、文章作成が”作業”と化した機会では、あまり参考にならないでしょう。
一方で
SNSでも「恋の告白」など、伝えたいことを読み手に、本当に理解してもらいたい場合なら、参考にしていただけると思います。
文章を書く流れは、簡潔に言うとこのようなものです。
・仮説形成→執筆→推敲
以下では、それぞれを分けて説明します。
ー仮説の作り方
- そのテーマの「ペルソナ」を考える
- ペルソナの「知りたいこと」を考える
- あなたの「書きたいこと」を考える
- 「論点」を設定する
- 論点に沿った大見出し、小見出しを考える
-
「仮説」を誰かに話してみる
- 大見出し、小見出しに必要な情報を収集する
1.そのテーマの「ペルソナ」を考える
ペルソナとは、その記事を読むと思われる推定読者。架空の人物より、知り合いの方が望ましい。なぜペルソナを決めるかというと、そのペルソナに向けて、記事を書けるからです。すると言葉のベクトルがはっきりし、そのペルソナはもちろん、その他の人々も感情移入しやすくなります。ペルソナが決まれば、その人を理解するために、属性に分けましょう。
例)留学PR記事を書く場合
ペルソナ:大学生の友達であるAsukaさん
「言葉のベクトルがはっきりしているほうが、感情移入しやすい」というのは、ラブソングも一緒ですよね。例えばスキー未経験者でも、ゲレンデの恋を扱った歌に、感情移入をしやすいです。違う例だと、
湘南乃風という音楽グループの「
純恋歌」という曲では、
大親友の彼女の連れ おいしいパスタ作ったお前
家庭的な女がタイプの俺 一目惚れ
という歌詞があります。これ、言葉のベクトルが発揮していますよね。だから感情移入しやすく、万人に受け入れられる名曲となったんだと考えます。
つまり、みんなに喜ばれようとすると、誰からも喜ばれない文章になる。知りあいの”あの人”ただ1人に向かって文章を書く
ということを忘れないでください。
2.ペルソナの「知りたいこと」を考える。
これは記事の論点※を設定する上で、重要となります。なぜなら「記事に書きたいこと」と「ペルソナが知りたいこと」の重なる部分が論点だからです。なぜ論点に「ペルソナの知りたいこと」を考慮すべきかというと、読み手は「自分が興味を持てない文章」をわざわざ読もうと思わないからです。つまり「書き手が伝えたいこと」でありながらも、ペルソナの「知りたいこと」を含めることで、興味を持ってもらう必要があります。
※論点に関する説明は、次項4.論点を設定するで、行います
ペルソナの「知りたいこと」を見抜くには、ペルソナの問題意識から推測します。問題意識には「本音」と「建前」があります。簡単に検討がつきそうな問題意識を「建前の問題意識」、そしてペルソナすら気づいていないような、深層にある問題意識を「本音の問題意識」と呼びます。
例えば書き手である”あなた”が「フィリピンにある語学学校のPR記事」を書くとします。先ほどの例で出した、
例)留学PR記事を書く場合
ペルソナ:大学生の友達であるAsukaさん
→19歳、女性、Fラン大学生、就活に焦り、TOEIC500点程度、留学経験なし、国際コミュニケーション学部、アウトドア、真面目
がペルソナの場合「知りたいこと」をどういったものだと想像するでしょうか。おそらく、
といった内容をを想像するでしょう。
しかし、それはペルソナの「本音の問題意識」に迫っているでしょうか。私であれば
・「わたし、Fラン大学だし、TOEICで900点くらいとっておかないと、就活ヤバイ…。誰かその方法教えてっ!!」
といったように想像を働かせます。
「Fラン大学生」と「就活」という2つのキーワードをもとにすれば「
TOEICで900点を獲得する方法」がペルソナにとって、本音の問題意識に迫っていることではないかと思うのです。できるだけ、ペルソナの本音の問題意識に沿って「ペルソナが知りたいこと」を見抜く。そのほうが、読み手の的を得た論点となります。
ペルソナが持つ本音の問題意識に迫るには、想像を働かせるしかありません。それを助ける方法として、一度ペルソナの生活を送ってみると良いです。例えばペルソナが「東京出身で、東京(赤坂)で働らく20代男性の
ビジネスパーソン、趣味は映画鑑賞(ジャンルはざっくばらん)と料理作り(イタリアンが得意)」としましょう。
だとすると1度赤坂に行って、ペルソナの働く土地の”空気”を感じるのです。学校や仕事終わりに、映画館に行ったり、家でイタリアンを作ったりしてもいいのです。そうすることで気持ちが、書き手の立場からペルソナ(推定読者)の立場にうつり、想像しやすくなるでしょう。
3.あなたの「書きたいこと」を考える
あなたが心から、書きたいかどうか。書きたいと思えない記事は、書けない。気持ちが乗りません。もし書きたいと思えないのなら、どうやったら書きたいと思えるか、考えましょう。
例)「ネジのPR記事」を書く依頼がきた
→ネジを製造している人から、ネジに対する熱い想いを聞いてみる。ネジなしの生活を送り、逆にネジの重要性を感じる。そうすることで「ネジなしの生活がいかに不便か」というメッセージを伝えたいと、思うかもしれません。
4.論点を設定する
論点とは何か。それは「相手の意思判断に影響を及ぼす項目」です。つまり論点を正しく設定することが、書く目標の第3フェーズ「読者を動かす文章を書く」を達成できるかに影響します。前述のように「記事に書きたいこと」と「ペルソナの知りたいこと」で重なっている箇所から、論点を設定しましょう。
論点の数は、1記事に1つが良いです。なぜなら論点が多いと、それだけ説明する情報量が多くなるからです。情報を詰め込んでも、エッジがなく読まれません。たとえ読まれたとしても、響かないのです。伝えたいことは、1つに。それ以外は、捨てる心構えが求められます。
例)
1.フィリピン留学の場合
- ペルソナ:
19歳、女性、Fラン大学生、就活に焦り、TOEIC500点程度、留学経験なし、国際コミュニケーション学部、アウトドア、真面目
- 記事に書きたいこと:サウスピークに留学し、TOEICを900点まで向上できる秘訣
- ペルソナの知りたいこと:TOEIC900点を取る方法
- 論点:サウスピークに留学すれば、900点獲得できて、Fラン大学生でも就活でなんとかなるか
ペルソナはその論点によって、意思判断に影響が及びそうでしょうか。そしてペルソナはその記事により、論点に関わる行動を起こしそうでしょうか。論点設定が適切かどうかは、「ペルソナの意思判断に影響が及ぶか」で検討します。
上記のように進め、論点に沿って大見出しと
小見出しを考えます。大見出しは別名「タイトル」で、論点をそのものを表現します。大見出しの良し悪しで、読者は「その文章を読むか」を決定します。そのため大見出しは、非常に重要です。
小見出しは、論点の根拠を表します。その論点を説明する、重要なキーワードが含まれていることが多いです。数は文章の長さによって変わるものの「
結→起→承→転→結」という流れに沿って、論理展開するタイミングで置くと良いです。
例)
論点:サウスピークに留学すれば、900点獲得できて、Fラン大学生でも就活でなんとかなる?
大見出し(結):半年のフィリピン留学でTOEIC900点越え達成。「これって奇跡?いや、必然だと思えました」Fラン大生のAsukaさん
- 小見出し1(起):私だって大企業いきたい!TOEICが就職の武器になると信じて留学
- 小見出し2(承):“TOEIC対策“しなくてもカリキュラムに従えば、900点獲得できた
- 小見出し3(承):「発音ができると、聞ける、話せる」発音矯正レッスン
- 小見出し4(転):「日本語禁止の環境へ、いざ行かん」半年のラストスパート
- 小見出し5(結):半年を振り返って、就活への可能性と期待

大見出しと、小見出しを考え抜くために、記事執筆であれば、7割の時間を費やしましょう。というのも大見出しと小見出しの構成は、いわば設計図や地図のようなものなのです。「設計図を書かずに家を作ったり、地図を持たずに旅で出ることが、いかに非効率か」ということから理解していただけるでしょうか。
構成がおろそかなまま書き始めると、構成を考えながら書かざるを得ません。「執筆を進めたものの、十分な情報量を書けるテーマではなかった」ことも起こりえます。そうしてやり直す時間は非効率で、精神的、肉体的に負担となります。
6.仮説を誰かに話してみる
大見出しと、
小見出しを決めました。仮説が決まれば、ここで1度、誰かに話してみましょう。話すことによって得られる効果を「3つの再」と呼びます。
- 再構築:バラバラに散らばった内容を再構築し、理解を深める
- 再発見:考えを顕在化させる過程で、突然新たな情報を発見する瞬間がある
- 再認識:どういう認識で、その対象を見るのか。ピントを合わせ直す
ここでは「相手からアド
バイスをもらうこと」より「頭の中を整理すること」に重きを置いています。仮説中にうまく説明できない箇所や、違和感があるとき、それは論理展開が不自然だと心得てください。「3つの再」を通し、仮説を微調整します。
小見出しに必要な情報を集めることを「素材集め」といいます。素材集めの方法は、
が挙げられます。適切に仮説が設定されていれば、素材集めは滞りなく行えます。
読まれたければ、リズムよい文章を目指せ

素材集めが終われば、いよいよ書き始めます。素材は
小見出しごとに、箇条書きで洗い出します。
※書き出す前ですが、視界に入るところに「ペルソナ」と「論点」を書いた紙を貼るようにしてください。嫌でも意識して、書き出すことができます。
箇条書きである理由は「うまく書こうとする気持ちを抑えるため」です。うまく書こうとすると「表現力豊かなフレーズを盛り込むこと」に意識が回ってしまいます。そうではありません。文章を書く意義は「伝えたいことの道
のりを示せる」ことであり、文章を書く際の目標は、根本に「完読される文章を書く」ことでしたよね。つまり、まずは必要な情報を書き出すことだけに、集中すれば良いのです。
例)
小見出し「“
TOEIC対策“しなくてもカリキュラムに従えば、900点獲得できた」の文章を書く場合
・
TOEIC対策になっていたのは、レッスン中ではなく、予習復習。
・予習復習では、主に音読学習を行った。
・予習復習の方法は、カリキュラムに指定されていた。
・音読していると、記事内のストーリー、構造、英語表現まで覚える。
・音読を通し、
TOEICにはパターンがあり、頻出のストーリーと英語表現で成り立っているということに気がついた。
・
TOEICの本番で、リスニング、リーディングパートともに、見覚えがある。
・カリキュラムに書かれた方法で、レッスンをうけ、そのレッスンの予習復習をすれば、誰でもTOEIC900点を獲得できると思う
このように素材を小見出しごとに洗い出せば、あとは文章をつなげていくだけです。このとき、書き出した全ての素材を繋げなくても構いません。「多く集めて、あとで削る」感覚を持ちましょう。
例)
TOEIC対策になっていたのは、レッスン中ではなく、予習復習です。TOEICで900点を獲得するために、カリキュラムに指定されたいた学習法が主に音読です。もともと音読は、英語を英語のままで理解することが目的です。しかし音読していると、その記事内のストーリー、構造、英語表現まで覚えます。
そして音読を通し、TOEICにはパターンがあり、頻出のストーリーと英語表現で成り立っているということに気がつきました。TOEICの本番でも、リスニング、リーディングパートともに、見覚えがあるんです。だからカリキュラムに書かれた方法で、レッスンをうけ、そのレッスンの予習復習をすれば、誰でもTOEIC900点を獲得できると思います。
書いている途中で、素材が足りていないことに、気づくかもしれません。その際に、いちいち素材集めに戻るのではなく、気になる箇所をマーク(★)しておくと良いです。いったん、あらあらと書き終えた後に(★)した箇所用の素材集めをまとめて集めるのがポイントです。
次に素材をつなげる過程で、読みやすい文章にするポイントを紹介します。
・論理的に書く
文章の読みやすさは、リズムによって決まります。 リズムとは、本質的にいうと「論理展開」です。文と文のつなげ方や展開の仕方がおかしいとき、その主張は支離滅裂になり、リズムよく読めなくなります。
「結論→理由→具体例」という結論ファーストの論理構成は、一般的で、読者にとって理解しやすいでしょう。基本的に
小見出し内の構成としては、結論から始まり、理由、具体例と進めます。
「因果関係が正しいかどうか(AならばB)」を判断するには、
- 本当にそうなの?(縦の論理)
- それだけなの?(横の論理)
という2つの側面から事象を捉えます。「本当にそうなの?」という縦の論理では、

- 具体的に表す必要がある事象を抽象的に表現していないか:
例)「公務員は安定しているので(A)、大学生に人気がある(B)」
→「公務員」といっても色々な業種があるし、大学生といっても、学歴や考え方など一括りにするのは難しい。
- 偶然起こり得るとを必然のように表現していないか:
例)「現在、○○社は業績が良いので(A)、投資をお勧めします(B)」
→○○社は現在の業績が良いために、「今後も業績が良い」ことを必然として捉えている。しかし「たまたま良かっただけでは?」と思われるかもしれない。
を確認します。「それだけなの?」という横の論理では、

- 原因に「漏れがないか」:
例)「以上のことから、〜だと言えます」
→他に、原因となる要素はないか。
を確認します。つまり相関関係を因果関係のように説明してしまうと、読者は文章に疑問を持つので、注意してください。
※相関関係……結果に影響をもたらし、原因のように見える。しかし再現性がない
・修飾語禁止令
思い切って、修飾語の使用をやめましょう。修飾語を使用するデメリットとして、
- 冗長になる:
「とことん」「なかなか」「ビシッと」のようなものを書くと、冗長になる。冗長だと論理構成は正しいのに、リズムが悪く感じる。
- 事実関係が甘くなる:
感覚的な言葉で通じ合うには、共通の感覚がいる。そのため、齟齬が生じやすい。
という2つが挙げられるからです。それ以外に、以下の要素が文章のリズムに影響します。
・文体の統一感
文体とは、大きく2つの要素によって構成されます。
- 文章の語尾に注目して「です、ます」調か「だ、である」を使い分けること
- 「私「ぼく」「俺」「著者」とった主語を使い分けること
これらが統一されていないとき、読者はリズムが悪いと感じてしまうので、注意しましょう。
※意図的に「です、ます」調に「だ、である」調の文章を織り込むことで、リズム感が増すというテクニックも存在します。
・視覚的リズム
実のところ、読者は眼でも文章を読みます。文章に対し一瞬で「読みやすいかどうか」を判断します。
- 読点の打ち方
1つの文章に、1つは読点を入れましょう。もし読点が入らなければ、かっこ(「」)を使います。音読によって切れる場所には、必ず読点をいれると良いです。書き手からすると「こう書いたんだから、こう読むに違いない」と思うことがありますが、読み手に、その意図は伝わりません。「多いかな」と思うくらいでちょうど良いです。
- 改行のタイミング
書き手は内容だけでなく、全体の見た目に対しても、気を配ります。最大5行ごとをメドに、改行しましょう。
- 漢字とひらがなのバランス
漢字3:ひらがな7の割合がちょうど良いです。というのも漢字を多用した文章は、第一印象が悪く、ひらがなには、ひらがなの圧迫感があります。漢字に変換する文字は「文章中で重要な言葉だけ」と決めておきましょう。
これは人が無意識に、漢字だけを拾って読む特性があり、重要な文字を漢字に起こしておく必要があるからです。こうすれば、必要のない言葉までも、漢字に変換することがなくなり、自然と漢字3:ひらがな7の割合にできるでしょう。
・聴覚的リズム
- 語尾の連続:2回まで。同じ言葉が何度も重なると、文章のリズムが途端に悪くなります。「である。」で閉めた後の文章は「〜だ。」など、別の語尾で締めるべきです。
- 敬語:二重敬語は聞いていて、くどいので止めましょう。
例)御覧になられる(御覧になる+なられる)
- 重要表現の繰り返し:同じ表現を3回以上使うと、くどいです
※くり返せば繰り返すほど、表現の重要度、説得力を強く感じるもの。上級テクニックとして「表現を変え、10回以上同じことを繰り返す」があります。
- 1つの文章に、1つのメッセージ:「伝えること」が根本の目的であるため、1つの文章に、たくさんのメッセージを盛り込むのは控えましょう。確実に、1つの文章ごとに、1つのメッセージをのせるほうが、誤解が生まれず、伝わりやすいです。
今述べたものの他に、記事を書く上で、忘れてはいけないことが存在します。それが「読み手への配慮」です。
・「読者は何も知らない」という前提で書く
記事を書く際に、読者を置いてけぼりにしない。集中して書いた文章が、集中して読んでもらえるわけでは、ありません。読者が
スマホでソファに座りながら、その文章を読むとします。その場合、読み手はリラックスしていて、頭が回っていない状態かもしれないのです。
その場合、論理展開が急だったり、専門用語などの難しい言葉を使ったりしていると、途中で離脱されるかもしれません。文章を書く目標フェーズ2「完読される文章を書く」を達成するためには、読者は何も知らない前提を持つと良いです。
具体的には「お母さんがその文章を読んで、理解されるのか?」また「宇宙人が読んでも、理解してもらえるか?」と考えます。
例)英語力向上においては、学校が指定したカリキュラムが良かったです。
→※カリキュラムとは…学習の手引き。「英語学習法」×「日本の参考書」×「学習環境」×「フィリピン人講師」という4つの要素を最大限生かし、一人ひとりにあわせて作成している。
カリキュラムは、母親にとって理解できるか?おそらく理解できないので、カリキュラムに関する「注釈」を与える。
・五感描写、具体例の腕をあげる
面倒くさい細部の描写によるリアリティが読者の理解を促し、文章の説得力を強化につながります。
例)
- 赤い花→ハイビスカスの花
- 寒い日→鼻水が凍る、氷点下5度の日
- 発音矯正をする講師が厳しいんです。うまく発音してるつもりでも、指摘されてしまう。あれは、つらかったですね。
→発音矯正レッスンで、フィリピン人講師がまるで、鬼ように見えました。英語の発音をするたびに「もう1回!もう1回!」って。キュービクルという小部屋に2人きり。逃げ出したくなるような圧迫感がありました。
・自分の文章にツッコミを入れる
「伝えたいこと」という、答えの一本道に沿って、論理的に説明するだけではいけません。なぜなら、たとえ「伝えたいこと」に説得力があっても、文章が書き手の中で自己完結していれば、読み手は反論したくなるからです。こうなると、読み手が納得感を得られません。そうならないために、自分の文章に「反論」という寄り道をしてあげるべきです。
嘘をつく時点で、相手へに尊敬の念はないのです。
・設定において、小さな嘘(フィクション)は許されない。
ゴジラが街にやってくるというのは、大きなウソです。しかし
ゴジラの攻撃から逃げる主人公が、倒壊したコンビニ前にある公衆電話を使う場面だと「コンビニは壊れているのに、電話線は生きているのかよ」と突っ込まれてしまう。小さな嘘がバレると、記事自体を信用できず、読者は納得できません。
・愛や奇跡といった、手垢のついた言葉は使わない。
誰にでも言える表現を、他の言い回しで表してこそ、価値が生まれる。人を惹きつける文章を書きたければ、手垢のついた言葉を極力言い換えましょう。
→そのために、
ボキャブラリーを増やすことが大事。またテーマを深く理解し、適切な表現を考える必要もある。
例)フィリピン留学のPR記事の場合
- 半年のフィリピン留学でTOEIC900点越え達成。「これって奇跡?いや、必然だと思えました」Fラン大生のAsukaさん
→半年のフィリピン留学でTOEIC900点越え達成。「別に、楽しくない留学。でも来てよかった。」Fラン大生のAsukaさん
書き終えたら”自分のため”に、他人になる
ー推敲の際のポイント
推敲する際のポイントは「書き手」から「読み手」の立場に変えて、文章を見ることです。方法は2つあり、オススメは音読です。音読によって読み手として文章を捉えられ、リズムの悪さ、不適切な言葉など、細かい点に注意が行き届きます。スムーズに読めて、なおかつ納得できる内容であれば、合格です。
以下に、推敲で確認すべき点をまとめました。「大→小」に、全体から部分にかけて推敲していきましょう。
リズムが良い文章にするためのチェックリスト
【1〜2回目の推敲:納得できる文章にする】
- 論理展開は破綻、飛躍してないか
- 説得力に欠けていないか
【3〜4回目の推敲:勘違いのない文章にする】
- 1つの文章に、1つのメッセージか
- 修飾関係を適正化しているか:修飾語は、被修飾語の直前に置く。
例)素晴らしいピカソの作品を見たい。
→ ピカソの素晴らしい作品を見たい。
- 被修飾語の順番は正しいか:「長い修飾語」→「短い修飾語」
例)×美しい掘り出し物のテーブル
○掘り出し物の美しいテーブル
【5回目以降の推敲:読みやすい文章にする】
- 読点のないまま、ダラダラ続いてないか:音読するタイミングで読点を置く
- 同じ言葉を連続して使ってないか:
「である」や「とても」など、ひらがなで書かれた言葉は、文中に埋もれやすい。
- くどい言い回しを使ってないか:
「という」「と思います」「するとします」「するようにします」を使わない
- なくても通じる接続詞を使ってないか:
「だから」「それで」「そして」「それから」順接の接続詞が本当に必要なのか
- 副詞を乱発してないか:だいぶ/とても/すごく/たくさん/本当に/心から
ー推敲が行き詰まったら

同じ文章を何度も見ているうちに、再び読み手から書き手に、見方が変わっている場合があります。そのとき、以下のようにして対応してください。
- 時間を空ける:
新鮮な気持ちで、記事をもう一度読む。すぐに読み直す必要があるときは、デスクからお手洗いに行くだけででも、気分転換になります。
- 印刷して読む:
文章を印刷すると、「書き手」から「読み手」へ気持ちが一気に切り替わります。
- 思い切ってフォントを変えてみる:
ワープロソフトを変えたり(wordからiText Pro)、フォントをゴシックから明朝系へ変えたり、横書きから縦書きに変えたりする。デザインを変えることも有効。
もう1つオススメの手段として、
を紹介します。当たり前のようですが、良い文章を書いたと思うほど、他者からの批判を恐れてしまう傾向が見られます。しかし書き上げた文章を他者に見せれば、客観的な視点を手に入れやすいです。
その際にもし「この一文の意味がわからない」と指摘されても、反論してはいけません。「反論しなければいけない」ということは、それだけ言葉が足りていないのです。書き手は「なぜこの一文がこの箇所に入るのか」あるいは「なぜこの一文がこの箇所に入らないのか」をすべて説明できる必要があります。
以上のように「仮説形成→執筆→推敲」までの一連の流れを持って、文章執筆は完了です。
普段から文章力を上げるには「考える」しかない
ー日々の中からできること
文章の書き方を説明しましたが、いかがでしたか?これで「書けそうだ」と思った人がいれば「いや、仮説形成が大変そうだ」と思われた方もいるはずです。両者の差は、おそらく「考える力」の差だと私は考えます。仮説形成を行うには、自分の考えを整理する力が必須です。そのために、すべきことは「普段から考えるしかない」のです。
もし「考える重要性は分かったけど、考える方法を知らない」という人がいれば、メモ書きをオススメします。メモ書きの方法は著・赤羽 雄二の『ゼロ秒思考』に詳しく記載されています。
メモ書きの効果は、以下の通りです。
- 記憶効果
- 情報生み出し効果:
「モヤ」に形を与えることで、情報として認識することができます。
- 気づき効果:
文字に起こすことで、「あ、俺はサスペンスフルな心理戦が好きなのか」と気づくことがある。「モヤ」の状態では、決して見えなかったものがみえる。

筆者が実際にメモ書きに使用した紙
視覚化する作業(書く)は、思考の「整理→再構築」の役割を果たすのです。普段から整理して再構築する練習をしておけば、文章を書く際も、必要な情報を引っ張り出しやすくなります。そして適切な日本語を使用し、論理的に展開できるようになるでしょう。
以上のことから、考える力を高めるには、メモ書きするしかないのです。迷うヒマなく、メモ書きしてください。
「考える力」に加え、文章力が上がると期待できるト
レーニングを紹介します。
- 商品理解:
自分が理解していないことを、相手に理解させるのは難しいです。なぜなら説明は、自分が持っている知識量に依存するからです。記事を執筆するには、そのテーマとなる分野を理解する必要があります。
- 敬語の勉強:
敬語が分かっていないと、文章中に誤解を招く恐れがあります。
- ひとことで言う練習:
根本思想を掴む。根本思想を掴む精度を上げると、ペルソナが持つ本音の問題意識に迫りやすくなります。根本思想を掴むために、日々の会話で、相手の言わんとすることを、極力短く、自分の言葉で言ってみる。そして「〜さんのおっしゃったことは、つまり、こういうことですよね」と、その要約した言葉を相手に確認してもらうと良いです。
- 読書:
つらいときこそ、本を読みましょう。記事執筆に関して、伸び悩みがあれば、自ら吸収しようとすべきです。本は、効率の良いインプットソース。
- 音読:
新たな日本語の言い回しや、適切な日本語の使い方を学びたい人にオススメ。黙読は、受動的で自分のリズムで読む行為です。一方で音読は能動的で、相手のリズムで読む行為。細心の注意を払いながら読めるので、作者独特のリズムや言葉が目に入ります。
さいごに

文章を書く意義とは、
文書を書く上での目標は、
文章を書く流れは、
普段から文章力を上げるには「考える」しかない。
簡潔にまとめると、以上のようになります。この記事は本来、頭の中を整理する目的で作成し、非公開としていました。しかし最近、働いていた会社の後輩インターンと関わる機会があり「彼らの書く技術向上に貢献したい」と思い、修正、加筆した上で公開した経緯があります。
後輩インターンだけではなく「これから文章を書くことと、真剣に向き合う理由が生まれたひと」にとって、役立つことを願いつつ、終わりとします。
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↑私のインターンに関する活動は、こちらからご覧ください。
参考文献
- 赤羽 雄二『ゼロ秒思考』ダイヤモンド社,2013年
- 唐木 元『新しい文章力の教室 苦手を得意に変えるナタリー式トレーニング できるビジネスシリーズ』インプレス,2015年
- 上阪 徹『超スピード文章術』ダイヤモンド社,2017年
- メンタリストDaiGo『人を操る禁断の文章術』かんき出版,2015年
- 山口拓朗『何を書けばいいかわからない人のための「うまく」「はやく」書ける文章術』日本実業出版社 ,2016年
- 齋藤 嘉則『新版 問題解決プロフェッショナル』ダイヤモンド社,2010年
- 古賀 史健『20歳の自分に受けさせたい文章講義』講談社,2012年
- 一般社団法人 共同通信社『記者ハンドブック 第13版 新聞用字用語集』2013年,共同通信社
- 津川 友介『「原因と結果」の経済学―――データから真実を見抜く思考法』ダイアモンド社,2017年
- 高田 貴久『ロジカル・プレゼンテーション ― 自分の考えを効果的に伝える戦略コンサルタントの「提案の技術』 英治出版,2004年